Sho tanakaProjects:Gray's Coffee
sho tanaka

web designgraphic design

UI/UX design

Gray's Coffee

< 概要 >

ブランドサイト、事業企画の学習としてGray's Coffeeを制作。デザインを"作る"だけでなく、コンセプト設計から商品ライン設計、競合分析、ブランドステートメント策定までを一貫して自分ひとりで行うことで、事業視点を持ったブランディング設計力を検証することを目的とした個人プロジェクト。「Gray」という色を、周囲の光によって表情を変える色として再定義し、"シーンによって表情を変えるコーヒー"というコンセプトを軸に、6商品のプロダクトライン、5つの顧客ペルソナ設計、競合分析(Blue Bottle、%Arabicaなど)までを一気通貫で構築した。

< プロジェクト背景 >

近年のコーヒー市場では、"こだわりの豆"や"職人の焙煎"を打ち出すブランドが増えた一方、店舗のトンマナやメニュー訴求は似通い、消費者から見た差別化ポイントが不明瞭になっている。ブランドの多くが「品質」や「産地」を軸に語る中、"どんな場面で、どんな気分で飲むか"というシーン起点の設計はほとんど存在しないという仮説を持ったことが出発点。この仮説を検証するため、コンセプト設計から競合分析、商品ライン設計まで行い、事業視点を持ったブランディングが実際にどこまで組み立てられるかを試すプロジェクトとして着手した。

< 課題 >

シーンによって表情を変えるコーヒーという仮説を、単なるコピーやビジュアルの装飾ではなく、ブランド全体で一貫して体現できる設計に落とし込めるかが最大の課題だった。特に、①"Gray"という色をどう再定義し、ブランドの核となる概念に転換するか、②その概念を6商品それぞれの個性としてどう分解するか、③抽象的なコンセプトを異なる顧客層(5ペルソナ)に対してそれぞれ説得力を持たせて届けられるか、という3点を解く必要があった。コンセプトが独りよがりな世界観で終わらず、事業として成立しうる構造になっているかを検証することが問われた。

< 戦略/アプローチ>

Grayの再定義 /

グレーを「無彩色で退屈な色」ではなく、「周囲の光によって表情を変える色」として捉え直した。曇天のグレー、夕暮れのグレー、街灯に照らされたグレーはそれぞれ異なる印象を持つ。この性質を"シーンに応じて表情を変えるコーヒー"というブランドコンセプトのメタファーとして採用し、Grayを単なる配色ではなくブランドの思想そのものに転換した。

6商品への分解 /

コンセプトを抽象のまま終わらせないため、6つの商品それぞれに具体的な「シーン」を紐づけて設計した。商品名・パッケージの方向性を、朝の支度、集中したい仕事中、夜のリラックスタイムなど異なる生活シーンに合わせて個別に構築し、コンセプトが商品ラインナップという形で体感できる状態を作った。

5ペルソナへの接続 /

年齢・ライフスタイル・コーヒーとの関わり方が異なる5つのペルソナを設計し、それぞれが6商品のうちどれに最も反応するかをマッピング。抽象的な世界観を「自分ごと」として捉えてもらえるかを、ペルソナ単位で検証した

<webサイト>

ブランドコンセプトを"見た目"に翻訳する最終アウトプットとして、ブランドサイトを設計。背景色には純粋なモノクロではなく、淡いブルーグレーを採用し、"周囲の光によって表情を変えるGray"という概念を、写真の彩度や差し色のオレンジとの対比で表現している。ビジュアルは、コーヒーそのものを主役にした商品訴求ではなく、"飲んでいる人・その場面"にフォーカスした写真を採用。コーヒーはあくまで脇役として画面に映り込む構成にすることで、"コーヒーの説明"ではなく"シーンの体験"を伝えるサイトになることを狙った。ヒーローコピー「Change the scene, and the drink changes too.」は、そのコンセプトを一文で言語化したものとして最上部に配置し、抽象的な世界観を"自分にも当てはまる話"として伝わる構成にした。商品はSix Scenes Trialとしてまとめて試せる導線を用意し、購入前の心理的ハードルを下げている。

< 成果/学び >

競合分析の結果、Blue Bottleは"品質と製法へのこだわり"を、%Arabicaは"店舗体験とビジュアル訴求"を強みとしており、いずれも「シーン起点」で商品ラインを設計しているブランドは見当たらなかった。この比較を通じて、Gray's Coffeeの"シーンで選ぶコーヒー"というコンセプトが、既存ブランドと異なる差別化ポイントとして成立しうることを確認できた。このプロジェクトを通じて得られた学びは、ビジュアルやコピーの精度以前に、「概念をどう構造化し、商品・顧客・競合という3つの軸すべてに一貫させるか」が事業視点のブランディングの核であるということ。デザインの技術だけでなく、市場を観察し仮説を立て、検証可能な形に落とし込む思考プロセスそのものが、このプロジェクトの最大の成果だった。

©sho tanaka